2018年11月09日 日刊工業新聞 変わるマーケティング
劣化コンクリを補修 普及へ協会組織と講演会 福徳技研
技術をオープン
橋梁やトンネルなどィンフラの劣化が問題になる中、コンクリートの補修技術に注目が集まる。福徳技研(広島市中区、徳納剛社長、082-243-5535)の「リハビリエ法」は、コンクリの劣化原因そのものに対処できる工法。協会組織を通じ、技術をオープンにして普及を図っている。
鉄筋コンクリートの劣化原因の大半を占めるのが、鉄筋がさびて膨張することと、砂利の周囲に生じたゲルが膨張するアルカリシリカ反応(ASR)の2点。これまでは、コンクリートの欠損部やひび割れをコンクリなどで再び埋め戻す"対症療法"が中心だった。これに対し、リハビリ工法は、亜硝酸リチウムという薬剤を用いて二つの劣化原因に対処する。亜硝酸イオンが鉄筋のさびを止め、リチウムはASRの吸水膨張を抑える。
以前は、コンクリートの表面に亜硝酸リチウムを塗って含浸させる方法が主で、再劣化が起きていた。福徳技研は、圧力をかけてコンクリート内部に亜硝酸リチウムを注入する方法を開発。劣化の部位や規模などに応じ、6種類の工法を使い分ける。コンクリート構造物の延命に有効で、今後への期待も高いとして、2018年の「中国地域ニュービジネス大賞」を受賞した。
モノづくりの町
「広島はやはりモノづくりの町。広島だからこそ開発できた」と徳納社長。コンクリートへの穴開け工具ではシブヤ(広島県廿日市市)や呉英製作所(広島県東広島市)、圧力をかける油圧機器ではコトブキ技研工業(東京都新宿区)、空圧機器ではフマキラー系の大下産業(広島市安佐南区)の協力を得て開発にこぎ着けた。
興味深いのが、工法の普及方法だ。もともと同社は福徳塗装工業といい、塗装工事を主力としてきた。10年には社名を福徳技研に改名した。
110社が加盟
リハビリ工法の開発が進むにつれ、97年に施工業者など21社で広島県コンクリートメンテナンス協会を設立。さらに11年に全国組織の一般社団法人コンクリートメンテナンス協会として発展させた。同協会は「コンクリート構造物の補修・補強に関するフォーラム」と名付けた講演会を全国10カ所以上で開催するほか、見学会や技術研修も実施し、北海道から沖縄県まで約110社が加盟するまでになった。
フォーラムでは、リハビリ工法以外のコンクリート補修技術も広く紹介する。市場ニーズが新設から補修へとシフトする中で、うまく業界全般をもり立てながら、技術的な理解を進めることで、リハビリ工法の普及につなげる意図だ。苦労して実用化にこぎつけた工法をオープンにすることについては「当社だけではとても全国に広めることはできない。薬品や機器の販売で収益をあげていければ」と徳納社長は話す。