2018年06月18日 セメント新聞
メンテ協会東京フォーラム開く
2日間で1300人弱参加 コンクリートメンテナンス協会(会長・徳納剛福徳技研社長)が5~8月に全国11カ所で順次開催している「コンクリート構造物の補修・補強フォーラム2018」。東京フォーラムは5月29~30日に開催し、2日間で延べ1300人弱が参加した。初日には国土交通省の五道仁実大臣官房技術審議官や十河茂幸近未来コンクリート研究会代表、宮川豊章京都大学特任教授らが講演した。
五道氏は「国土交通行政の現状と課題」について解説。①2018年度予算の概要②建設業を取り巻く現状③建設産業における担い手確保④i-Construction(iコン)等の推進について紹介した。政府全体の公共事業関係費は当初予算ベースでは14年度以降横ばいを維持しているが、建設業就業者は高齢化が進行し、技能者の内訳は65歳以上が4分の1、29歳以下の若手は11%程度にとどまる。このため設計労務単価を「実勢価格を適切・迅速に反映」させて引き上げ、社会保険加入徹底も図っている。
同時に生産性革命の一環としてiコンを推進。①建設現場を最先端の工場へ②建設現場へ効率的なサプライチェーンマネジメントの導入③建設現場の2つの「キセイ」の打破と継続的な「カイゼン」の視点で取り組んでおり、16年度からトップランナー施策としてICTの全面的な活用(ICT土工)やコンクリート工の規格標準化などの全体最適の導入、施工時期の平準化を進めていることなどを説明した。とくに測量・調査、設計、施工、維持管理の各段階で3次元データを利活用するメリットに言及。今後は官庁営繕のような建築分野への展開も進めていく方針としている。
十河氏は「長寿命化のための点検要領について」解説。「コンクリート構造物は半永久構造物に考えるべき」とし、①コンクリート構造物の健康寿命②健康寿命を延ばす維持管理③小規模橋梁の点検要領④点検要領の作成に向けて―について述べた。「解体しなければならないまでの期間」を個体寿命、「安全な状態で共用できる期間」を健康寿命とし、コンクリート構造物にとって重要なのは健康寿命であり、適切な維持管理で健康寿命を延ばすことが必要と指摘。そのためには予防保全と早めの判断が重要で「予防保全のための点検は目視では限界があり、いかにして簡便な方法で劣化を予測するか」と課題を提起した。
市町村が管理する小規模橋梁を点検する要領の必要性にも言及。「コストをかけない点検で正確な診断」を行うための小規模構造物の点検要領書について検討を進めており「次回のフォーラムで公開予定」としている。
宮川氏は以前から主張し続けている「コンクリート構造物は丈夫で美しく長持ち」でなければならず、そのためには「造りこなし、使いこなす」ことが重要と訴えた。しかし実際には地震や塩害、アルカリシリカ反応(ASR)、プレストレストコンクリート(PC)のグラウト充てん不足などによる劣化事例が数多くみられる。このため亜硝酸リチウム注入などのASRが進行した構造物に対する補修・補強工法、漏洩磁束法によるPC鋼材破断調査法、高効率振動発電デバイスを用いたモニタリング、AI(人工知能)を活用した打音システムなど技術開発の一端を紹介。
「丈夫で美しく長持ちするコンクリート構造物がどのような一生を送るかというシナリオデザインを考え、適切な維持管理を行うために、(東京フォーラムの)2日間にわたる技術の紹介を学んで今後の維持管理に役立立ててほしい」と求めた。