2017年12月15日注射でリハビリ!リファイニング建築 週刊朝日
まるで天井から注射器がいくつも釣り下がっているようだ。
これは「リハビリカプセル工法」といって、塩害などで劣化したコンクリート構造物や部位の鉄筋腐食に抑制剤を注入することで、効果的に"治療"する補修工事だ。
既存の建物を大規模に補修してよみがえらせる「リファイニング建築」。リフォームやリノベーションとは異なる。弱くなった構造躯体の耐震性能を補強などによって現行レベルまで上げることで、建築の長寿命化を図る新たな再生手法だ。
既存の躯体の約80%を再利用することなどで、建て替えの60~70%のコストに抑えられる。古い建物を洗練されたデザインに変えることで大外観ともに新築同様に仕上がるほか、廃材をほとんど出さず、環境にも優しい。
この手法は青木茂建築工房が出がける。
代表で首都大学東京特任教授の青木茂さんは、若き日に訪れたイタリアで、美術館として再生した古城にヒントを得た。帰国後、長く使い続ける石の建築文化を応用し、建築技術に取り入れることになった。
低コストで新築同様の建物に仕上げる手法は、公共建物の再生にも取り入れられ、財政が厳しい自治体の「救世主」ともなっている。老朽化したマンションなどにも活用され、資産価値が下がることを悩んでいた住民らの喜びの声が届くという。