本日は平日のご多忙にお関わりませず、斯くも多数ご参加いただき有難うございます。
私たちは広島からやってきました。広島は塩害とASRが多い土地柄で、沖縄とよく似ています。私たちの補修の考え方は沖縄では受け入れられると確信しています。
本年度の私たちのテーマは「構造物の健康寿命を延ばすためのシナリオ」で、全国13都市で補修補強に関するフォーラムを開催いたします。沖縄は、5会場目となります。
さて、コンクリートの補修は非常に分かりにくいと言われますが、私たちが考える「健康寿命を延ばすためのシナリオ」そして本日紹介します補修技術をご理解頂けたら、決して難しくはありません。
我が国の社会資本を支える様々なコンクリート構造物は確実に老朽化し、劣化が進行しております。
このまま供用し続けると社会資本としての要求性能を満たせなくなる危機に面していると感じています。
その危機を防ぐには、「構造物が適切な性能を維持しうる期間」すなわち、「構造物の健康寿命」を延ばすしかありません。
コンクリート構造物の健康寿命を延ばすには,対象コンクリート構造物の将来のあるべき姿を想定して、「どのように維持管理していくか?」
というシナリオを策定しなくてはいけません。
過去に、
ひび割れがあるから、エポキシ樹脂を注入する、あるいはひび割れ充填する。
鉄筋が露出しているからポリマーセメントモルタルで断面修復をする。
という物理的劣化症状に物理的対処の補修をしてきました。
そして、いま、その構造物が再劣化が発生しています。
たとえば、ASRが原因のひび割れというだけで、エポキシ3種と決めて補修対策をしていませんか?
コンクリートの補修は定量的に考えれば難しくない
例えば劣化機構が塩害だと
・劣化因子はどれくらい入っているのか?腐食発生限界値よりも上か下か?
・対策工法の「塩害に効く」とは何を指しているのか?
それは、劣化因子遮断か? 鉄筋防錆か?
・構造物の重要度は? 経済環境は? →どれくらいお金をかけられるか?
と考えて、値段は高いが絶対に再劣化させない工法の選択か?
それとも、再劣化はするが、ベストコストパーフォマンスな工法を選択するのか?
・「ASR」も同じです。
高いが、再劣化をさせない工法の選択か?再劣化を供するのか?
将来のあるべき姿を想定して、維持管理のシナリオを作成することが、健康寿命を延ばすことにつながります。
劣化機構に応じて補修材料と工法を選定するだけでなく、
・それを定量的な観点に立って補修設計することが大切だと考えています。
・また、補修後の維持管理シナリオを、経済性を考慮した、時間軸で捉えることも重要です。
・再劣化させない工法が常に正しいとは限らないと思います。
・必要最小限の費用を投じて再劣化を許容する維持管理のシナリオ
も、構造物の与えられた環境を考えるとあるはずです。
定量的な補修工法と維持管理シナリオを総合的に組合わせることで、コンクリート構造物の長寿命化の実現、そして持続可能な社会の実現に寄与できると考えています。