(2)亜硝酸リチウムによる鉄筋腐食抑制効果
亜硝酸リチウムの成分である亜硝酸イオンとリチウムイオンのうち,塩害および中性化の抑制に寄与するのは「亜硝酸イオン」です.塩害と中性化は,劣化要因や劣化メカニズムは異なるものの,両者とも最終的には不動態被膜の破壊による鉄筋腐食の問題に帰着します.換言すれば,塩害および中性化の抑制とは,共に鉄筋腐食を抑制することと理解することができます.
亜硝酸イオン(NO
2-)の防錆効果についての研究成果は,1960年代に入って国内外で多数報告されています.亜硝酸イオンによる鉄筋腐食抑制メカニズムには諸説あり,亜硝酸イオンがアノード型インヒビターとして働く酸化剤としての効果(不動態被膜再生効果),亜硝酸イオンが鉄筋表面に吸着することにより鉄の溶解を抑制する効果などが提唱されており,それらが複合的に働いている可能性もあります.ここで,不動態被膜再生に着目すると,亜硝酸イオン(NO
2-)は2価の鉄イオン(Fe
2+)と反応してアノード部からのFe2+の溶出を防止し,不動態被膜(Fe
2O
3)として鉄筋表面に着床することによって鉄筋腐食反応を抑制します.これらを反応式で表すと図3-4のようになります.
亜硝酸イオン(NO
2-)と鉄イオン(Fe
2+)との反応により不動態被膜が再生されるため,以後の鋼材の腐食は進行しません.これが亜硝酸イオンによる鉄筋腐食の抑制メカニズムです.図3-5に鉄筋腐食の模式図を,図3-6に亜硝酸イオンによる不動態被膜の再生の模式図を示します.
図3-6 亜硝酸イオンによる不動態被膜の再生メカニズム