(2)塩害による劣化事例
塩害によるコンクリート構造物の劣化は,『塩化物イオンの侵入』→『不動態被膜の破壊』→『鉄筋腐食の発生と進行』→『腐食膨張圧によるコンクリートひび割れ』→『かぶりコンクリートの浮き・はく離』という過程を経ると考えられます.すなわち,塩害による劣化がコンクリート表面のひび割れとして顕在化した時点でコンクリート内部の鉄筋腐食はかなり進行しているものと考えるべきです.
図2-3は護岸構造物の床版下面に見られたコンクリートのひび割れおよび錆汁の滲出で,飛来塩分による塩害です.図2-4はRC上部工コンクリートの一部がはく離し,鉄筋が露出しています.
一見,鉄筋露出箇所以外は健全なようにも見えますが,タタキ点検の結果,斜線部の範囲のコンクリートがはく離していることが分かりました.外観変状として表れていなくても内部の鉄筋腐食は進行していることがあります.図2-5はPC上部工の主桁下面コンクリートがはく落している状況です.この事例では,鉄筋だけでなくシース内のPC鋼材も腐食していました.冬季に散布する凍結防止剤により局部的に塩化物イオンが供給され,著しい鋼材腐食を生じた塩害の例です.図2-6は塩害の再劣化事例です.過去にRC上部工の主桁および横桁において表面保護工による補修が,主桁下面において鋼板接着工による補強がなされています.しかし,既にコンクリート中に侵入した塩化物イオンと水,酸素の影響により鉄筋腐食が進行してしまい,さらなる腐食膨張圧が生じたことにより再び鉄筋位置にてコンクリートがはく離しています.こうなると,鋼板も主桁との一体化を保つことができず,補強効果は期待できません.このように,塩害による劣化はコンクリート内部の鉄筋腐食の進行に伴って進行するものであり,その進行速度は環境条件(海岸からの距離や凍結防止剤の散布量など)によっては極めて大きいことが特徴です.