本日は平日のご多忙のところ、かくも多数ご参加頂き有難うございます。
本年度、私たちコンクリートメンテナンス協会は、ご当地、札幌から那覇まで全国10か所で、コンクリート補修に関して最新の知見と技術を紹介するため、フォーラムを開催いたします。
今回の北海道フォーラムは本年度5回目の開催となります。北海道は寒冷地で内地とは事情が違うということで、私たちの定量的な塩害対策工法やASR対策工法がなかなか理解して頂けない地域でした。
しかし、北海道のコンクリートの初期劣化は塩害やASRであったりします。初期劣化部分から水が侵入して凍害が発生することも多々あります。
また、北海道はASRがないといわれた時期もありましたが、私たちASRを見慣れた内地から来たものが見ると、ASRは決して少なくありません。よって、私たちの考える定量的補修工法は北海道でも十分適応可能と考えることとして本日の開催に至っています。
本日の第一部は 北海道開発局建設部 道路保全対策官 菊池康 様に 「道路施設の老朽化に関する取組」と題しまして 行政の立場から 補修の考え方をお話頂きます。
第一部を受けて、コンクリート補修について、技術的な講演をしたいと思います。
それでは、私たちの定量的な補修の考え方について、少し話をさせて頂きます。
さて、多くの材料や工法の中から、選択をしなくてはいけない「コンクリートの補修」は難しいと思っていました。
しかし、現地調査から材料・工法決定まで、補修設計フローに沿って取り組むと、コンクリート補修はけっして難しいものではありません。
コンクリート補修の設計業務を行うとき、
「劣化機構の特定」から「補修に要求される性能」そして「補修工法の選択」と進んでいきますよね。
まず、劣化機構を特定するには劣化の指標値を求める必要があります。
劣化の指標値とは劣化程度の指標となる数値です。
■ 塩害であれば塩化物イオン濃度の測定値
■ 中性化であれば中性化残りの測定値
■ ASRであれば残存膨張量試験の測定値
そして、要求性能と補修工法を選定するための大切な指標となる数値が腐食発生限界値とも言われますが、劣化指標値の限界許容値です。
・この限界許容値は劣化程度を評価、判断するための基準となる数値です。
・例えば、【限界許容値】は
塩害であれば塩化物イオン濃度:2.0kg/m3
中性化であれば中性化残り:10mm
ASRであればJCI-DD2法による全膨張ひずみ:0.05%
劣化機構と構造物の劣化程度が特定できたら、劣化程度に対応できる、要求される性能【要求性能】を決めます。
その時に大切な判断が、再劣化が許容できるのか、できないのかが大切な要因となります。
そして最後に、要求性能をみたす事が出来る【補修工法】の選択と進めば、
補修とは決して難しいものではありません。
塩害・中性化の【要求性能】で「鉄筋腐食の抑制」があります。
この要求性能に対処できる補修工法で、防錆剤を使った工法の代表格が、本日、第4部で紹介される亜硝酸リチウムを使った工法です。
もう一つの代表格の電気防食工法についにては、7月20日に開催いたします、東京フォーラムで最新の知見を交えて詳しく紹介させていただきます。遠方ではありますが、ぜひお出でください。
われわれの、補修の考え方を、本日の講師の江良先生が 技術資料として作成し、最新の補修の考え方と補修技術を加え昨年に改訂しました。
本日の講演はこの技術資料に沿った内容となっております。
私たちコンクリートメンテナンス協会は、特定の技術の工法協会ではありません。
有効な、正しい、新しい技術を、議論しながら、推進してまいります。
本日の講演の内容が、北海道のコンクリート構造物の長寿命化に貢献できることを祈念いたします。
本日の講演に関しましては、当地会員の日栄建設さま、アイディエフさまに大変お世話になりました。有難うございました。
また、今年2月に国交省のNETISを取得した亜硝酸リチウム併用型表面含浸工法の暴露試験場を会澤高圧コンクリートむかわ工場内にご提供いただきました。今後の北海道のコンクリート保全技術開発に寄与させて頂きます。ほんとうにありがとうございました。
本日の講演に関しての質問や補修業務に関する質問等、ご遠慮なく事務局までお問い合わせください。また、本日の講師の先生方は休憩時間や講演終了後会場内にいますので、直接ご質問頂ければ幸いです。
本日は午後5時までの長時間となりますが、最後までご聴講頂けましたら幸いです。