本日は平日のご多忙のところ、かくも多数ご参加頂き有難うございます。
本年度、私たちコンクリートメンテナンス協会は、札幌から那覇まで全国21か所で、コンクリート補修に関して最新の知見と技術を紹介するため、フォーラムを開催いたします。
本日の札幌フォーラムが今年19番目の開催となります。
私たちコンクリートメンテナンス協会は広島県で発足いたしました。
広島県は海砂による塩害、山間部では融雪剤による塩害が多い地地域です。
また、ASRも多い地域です。
そのような過酷な地域でコンクリート補修に取り組んできました。
最初は多くの失敗をしました。 しかし、失敗をしない工法が分かるようになりました。
そして、要望に応える形で、このようなフォーラムを全国で開催することとなりました。
北海道は、私たちの会員がいないのと、要望もないので、今年の開催は断念していましたが、初めて要望があり、開催することとなりました。 ありがとうございます。
それでは、私たちの補修の考え方について、少し話をさせて頂きます。
さて、多くの材料や工法の中から、選択をしなくてはいけない「コンクリートの補修」は難しいと思っていました。
しかし、現地調査から材料・工法決定まで、補修設計フローに沿って取り組むと、コンクリート補修はけっして難しいものではありません。
コンクリート補修の設計業務を行うとき、
「劣化機構の特定」から「補修に要求される性能」そして「補修工法の選択」と進んでいきます。
まず、劣化機構を特定するには【劣化指標値】を求める必要があります。
【劣化指標値】とは劣化程度の指標となる数値です。
■ 塩害であれば塩化物イオン濃度の測定値
■ 中性化であれば中性化残りの測定値
■ ASRであれば残存膨張量試験の測定値
そして、要求性能と補修工法を選定するための大切な指標となる数値が【劣化指標値】の限界許容値です。
この数値を【限界劣化指標値】と表現して
・この限界劣化指標値は劣化程度を評価、判断するための基準となる数値です。
・例えば、【限界劣化指標値】は
塩害であれば塩化物イオン濃度:1.2kg/m3
中性化であれば中性化残り:10mm
ASRであればJCI-DD2法による全膨張ひずみ:0.05%
劣化機構と構造物の劣化程度が特定できたら、劣化程度に対応できる、要求される性能【要求性能】を決めます。
最後に、要求性能をみたす事が出来る【補修工法】の選択と進めば、
補修とは決して難しいものではありません。
塩害・中性化の【要求性能】で「鉄筋腐食の抑制」があります。
この要求性能に対処できる補修工法で、防錆剤を使った工法の代表格が、本日、第二部で紹介される亜硝酸リチウムを使った工法です。
もう一つの代表格の電気防食工法についにては、8月29日の大阪フォーラムで最新の知見を交えて詳しく紹介させていただきます。遠方ではありますが、ぜひお出でください。
われわれの、補修の考え方を、本日の講師の江良先生が 技術資料として作成し、最新の補修の考え方と補修技術を加え今年4月に改訂しました。
本日の講演はこの技術資料に沿った内容となっております。
私たちコンクリートメンテナンス協会は、特定の技術の工法協会ではありません。
有効な、正しい、新しい技術を、議論しながら、推進してまいります。
本日の講演の内容が、北海道のコンクリート構造物の長寿命化に貢献できることを祈念いたします。
本日は午後5時までの長時間となりますが、最後までご聴講頂けましたら幸いです。