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2024年12月13日 建設速報

2024年12月13日 建設速報 コンクリート構造物の話第6回
コンクリートメンテナンス協会の使命と挑戦

2024年12月13日 建設速報 コンクリート構造物の話第6回 コンクリートメンテナンス協会の使命と挑戦 | 一般社団法人コンクリートメンテナンス協会
私が所属している一般社団法人コンクリートメンテナンス協会は、広島に本部を置く団体です。広島は実は、海砂による塩害やアルカリシリカ反応(以下、ASRと記します)によって劣化したコンクリート構造物が非常に多い地域です。街中で見かける住宅地の擁壁や高架橋の橋脚などに、塩害特有の鉄筋腐食やASR特有の亀甲状ひび割れを“日常の風景"として目にすることができます。
過去には、これらの構造物に対して断面修復工や表面被覆工など、一般的な補修工事が行われてきましたが、残念ながら再劣化を起こした事例も数多く経験してきました。このことから、劣化の進行を根本的に抑制することの難しさを痛感しています。このような地域性もあり、私は常々「広島のコンクリート技術者として、塩害やASRの根本的補修技術を確立したい」という使命感のようなものを感じてきました。
その解決策への道の一例として、亜硝酸リチウムを活用した塩害・ASR補修技術の研究開発が挙げられます。リチウムと聞いて真っ先に思い浮かぶのはリチウム電池ですが、ASRを抑制する効果も期待できるというのですから頼もしいではありませんか。ASRとは、コンクリート中の反応性骨材の周囲に生成されたアルカリシリカゲルが吸水膨張することで生じる劣化現象ですが、そこへリチウムイオンを供給することでゲルの膨張性を抑制することができます(ゲルの非膨張化)。
一方、亜硝酸イオンは鉄筋の腐食反応を抑制する防錆剤としての効果が知られています。塩害とは、塩化物イオンが浸入することで鉄筋が腐食する現象ですが、亜硝酸イオンを供給することで鉄筋の腐食進行を抑えることが可能です(鉄筋不動態皮膜の再生)。
では、どのようにして亜硝酸リチウムをコンクリート内部に供給すればよいのでしょうか。一つの方法として、ひび割れ注入工、表面保護工、断面修復工を行う際に、これらの使用材料に亜硝酸リチウムを併用するという考え方があります。
さらに、より確実な方法として「内部圧入」という手法もあります。内部圧入とは、コンクリートに小径の孔を開け、そこから亜硝酸リチウムを0.5MPa~1.5MPa程度の圧力で加圧注入する技術です。この亜硝酸リチウム内部圧入工法は、京都大学大学院博士後期課程にて、宮川豊章先生のご指導のもとで研究開発を行って確立されたものです。
現在、亜硝酸リチウムを用いた補修技術は全国的に普及しており、各地で施工実績を増やしています。さらに近年では、亜硝酸リチウムを用いた床版防水工も開発され、さらなる発展を遂げています。
今振り返ると、塩害やASRの根本的抑制は一朝一夕で解決できるものではなく、現在も官学産の英知を集めて取り組んでいる重要課題です。かつて私が抱いた使命感は、もしかすると一種の勘違いや思い込みのようなものだったのかもしれません。しかし、その勘違いは今も続いており、ありがたいことに現在では、その思いを共有してくださる多くの方々とともに活動しています。これからも、その方々と共に使命を貫き、コンクリート構造物の維持管理分野の発展に少しでも貢献できればと考え、さまざまな取り組みを進めているところです。
コンクリート構造物の維持管理についてお困りのことがあれば、ぜひコンクリートメンテナンス協会事務局にご相談ください。皆様と一緒に問題解決に取り組むことを楽しみにしております。