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2024年11月15日 建設速報

2024年11月15日 建設速報 コンクリート構造物の話第2回 
維持管理は点検・調査から

2024年11月15日 建設速報 コンクリート構造物の話第2回 維持管理は点検・調査から | 一般社団法人コンクリートメンテナンス協会
私は主に、コンクリート構造物の調査、診断、補修、補強といった、いわゆる維持管理に関する業務に携わっています。私たちが日々向き合っているのは、どちらかと言えば、新しい美しい構造物よりも、長年の使用により傷みが目立つ古い構造物です。こうした構造物は、長年雨風にさらされて、さまざまな劣化や損傷が進行しています。これらの構造物をこれからも長期間安全に使い続けるためには、定期的な点検と適切な維持管理が欠かせません。
構造物の維持管理における最初のステップは、「点検・調査」です。点検用の資機材を車に積み込み、現場に向かう際、最初に行うことは、その橋を一度車で渡ることです。これはただの移動ではなく、橋への挨拶のようなもの。橋全体の状態を目視でざっくりと把握する大切なステップです。その後、車を降りて橋の下に潜り、ひび割れや剥離、鉄筋の腐食などを部材一つひとつ丹念に確認していきます。
調査を進めていくと、時には驚くような状態の橋に出会うこともあります。例えば、橋の下に降りて見上げると、大きなひび割れが無数に走り、コンクリートも剥落してボロボロになっている箇所もあります。さらに、剥離した部分からは錆びた鉄筋がむき出しになっており、その鉄筋自体も痩せ細っていることが少なくありません。こうした状態の構造物を調査することは決して珍しいことではありません。
しかし、このように著しく劣化が進んでいる橋でも、橋面上はたいていきれいに舗装されていることが多いのです。通行者やドライバーが橋の下を見る機会はほとんどなく、橋面上の見た目だけでは、橋の劣化に気づかないことが多いでしょう。その日の橋梁調査を終えた後は、そこに著しい劣化が進行していることを知っていますので、その橋を再び渡るのをためらい、迂回して帰ったことも少なくありません。
コンクリート構造物は、そこに劣化が進行しても一切文句を言いません。たとえ内部に劣化因子が侵入し、ひび割れや鉄筋腐食といった変状が生じても、悲鳴を上げることはありません。なんと健気なことでしょう。私たち人間は少しでも体調が悪くなるとすぐに病院に行くことができますが、構造物は自らの異常を訴えることができません。そのため、維持管理を行う者としては、定期的に構造物を診察し、その状態を把握することが重要です。早期発見、早期治療が、構造物を長く使い続けるための鍵となるのです。私たち維持管理技術者にとって、構造物の状態を定期的に把握し、早期に劣化を発見し、適切な補修を行うことは重要な使命です。さらに、従来の事後保全型から、将来的には予防保全型の維持管理体系へと移行していくことが重要です。こうした取り組みによって、構造物の長寿命化を図り、社会インフラの安全性を保つことができます。構造物の維持管理には技術と経験が必要ですが、それ以上に大切なのは、構造物に対する「気付き」と「思いやり」だと思います。