2024年11月29日 建設速報
2024年11月29日 建設速報 コンクリート構造物の話第4回
コンクリート構造物の寿命を考える
橋梁やダム、建築物などに代表されるコンクリート構造物は、耐久性に優れ、美しさも兼ね備えたものとして広く知られています。しかし、形あるものはいつか寿命を迎えるのが自然の摂理であり、コンク リート構造物もその例外ではありません。では、コンクリート構造物の「寿命」とは一体どのようなものでしょうか。ここでは、橋梁を例に考えてみましょう。
一般的に、橋梁の寿命には大きく 分けて二つの種類があると考えられ ます。一つ目は、社会の発展や交通量の増加に伴い、もとの幅員構成や線形では対応できなくなる場合です。これは、社会の要求に橋が応えられなくなり、道路改良の一環として架け替えられる場合を指します。 橋梁自体に問題があるわけではなく、あくまで社会の進展に橋が追いつけなくなるために、その寿命が終わるといえます。「機能の陳腐化」による寿命と言うことができます。過去の高度経 済成長期には、このような理由で多くの橋梁が架け替えられましたが、少子高齢化が進み、将来的な交通量の大幅な増加が見込めない現代において、こうした 「機能の陳腐化」によって寿命を迎える橋梁は、今後少なくなるでしょう。
二つ目の寿命のタイプは、橋梁が長期 間にわたって使用され続けた結果、さまざまな要因により著しい劣化が進行し、もはや対処が難しいと判断された場合です。あるいは、対処するよりも架け替えたほうが経済性に優れると判断された場合です。材料的・構造的な性能の低下による寿命と言えます。橋が劣化する 主な要因として、 塩害、 中性化、アルカリシリカ反応、 凍害、 化学的侵食、 そして疲労などが挙げられます。これらの劣化要因は、主に橋梁の設置されている自然環境や使用材料、 構造特性などによって引き起こされ、その劣化は年月とともに進行していきます。今後、橋の寿命というと、 主にこの「材料的・構造的劣化による寿命を指すことが 多くなるでしょう。特に高度経済成長期に大量に建設された橋の多くが、 竣工後50年を迎える日が迫っています。これらの橋は、多かれ少なかれ何らかの劣化を抱えており、適切な対処をしない限り、その寿命を 迎える日が確実にやってくるのです。 しかし、橋梁が寿命を迎えたからと いって、そのすべてを架け替えること は現実的には不可能です。財政的な制約もあり、今の日本ではすべての老朽化した橋梁を新しく作り直すだけの余裕はありません。そのため、現在供用中の橋梁をできるだけ延命化し、使い続けることが求められています。新たに建設される橋は、設計段階から供用年数が100年やそれ以上に設定されていることが一般的です。が、過去に建設された橋の多くは、50年程度の供用年数を想定して作られたものが多いのではないでしょうか。もし橋梁に感情があったなら、「え?50年 働けばいいって言ってなかった?」と言いたくなるかもしれません。
しかし、コンクリート構造物は本来、非常に耐久性に優れています。 たとえ建設当時の設計が50年程度の供用を見込んでいたとしても、適切な維持管理を施すことで、その寿命を大幅に延ばすことすことができるのです。 今からでも、適切な補修や補強を行えば、多くの橋梁はまだまだ現役で活躍し続けることが可能です。つまり、私たちには、これらの橋梁に「もうひと頑張り」してもらう余地が残されているのです。これからも、適切な維持管理を行い、少しでも長くこれらの社会資本を 活用し続けることが、私たちの大きな課題となっているのです。
(つづく)
[江良和徳 コンクリートメンテナンス協会専務理事/技術委員長]