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2021年7月15日  【コンクリート新聞】  JCI生コンセミナー 協議事項の活用 「良いコンクリート」の認識共有

JCI生コンセミナー
協議事項の活用を
「良いコンクリート」の認識共有

2021年7月15日 【コンクリート新聞】 JCI生コンセミナー 協議事項の活用 「良いコンクリート」の認識共有 | 一般社団法人コンクリートメンテナンス協会
 日本コンクリート工学会が7日にオンライン形式で生コンセミナーを開いた。今回は発注者、施工者、生産者の立場の違いによって「良いコンクリート」の定義が違うことをそれぞれ認識し、良いコンクリート構造物を施工するために、必要なことを討論した。
セミナーのテーマは「良いコンクリート構造物の施工のためにより良い生コンの製造を考える」基調講演は近未来コンクリート研究会の十河茂幸代表(前広島工業大学教授)が「良いコンクリートの製造を考える」の題で行った。講演では➀不具合が生じる原因に対して製造者が行えること➁JIS(A5308)規格を守ることは必要か➂品質管理が適切であれば受入検査は簡素化できないか④生コンで環境問題への貢献について説明。十河氏はコンクリート施工における代表的な不具合として、コールドジョイント、初期ひび割れ(温度、乾燥収縮、沈み)をあげ、沈みひび割れに関しては「生コンのブリーディング過多が要因だが、JISで規定されていない」と指摘した。
 一方、JISに規定されているものの、活用されていない協議事項を活用して、発注者と施工者は生コン工場と要求品質に関する認識を共有するよう求めた。また、JISについて「日本は北海道から沖縄まで細長く、気候も大きく異なる。地域ごとにローカルルールが使えるようにして、発注者、施工者、工場にとって使いやすい規格にしていくべき」と提言した。
 事業者から中日本高速道路の上東泰氏、施工者から竹中工務店の岩清水隆氏(建築)大林組の桜井邦昭氏(土木)、生産者から元全国生コンクリート工業組合連合会技術委員長の吉兼亨氏がそれぞれ話題提供を行った。上東氏は高速道路の構造物は山間部に多く、規模や部材断面が大きくて配筋が過密になりがちであることを紹介。そのうえで京都大学の宮川豊章氏の言葉を引用し「事業者の立場としては、丈夫で美しく、長持ちするコンクリート」が良いコンクリートであるとした。岩清水氏は、建築の場合、適用する部位や工法などによって、高強度、高流動コンクリートなどを使うことから、「良いコンクリートの定義が条件によって異なる」と語った。桜井氏は、土木分野で使われる生コンは数量が多く、スランプの小さい硬練りが多いことを紹介。ただ、職人の減少などを受け、締固めの人員が減らせる「高流動コンクリートの採用を増やしていかなければいけない」と語り、生産者に対して供給体制を整備するよう求めた。吉兼氏は、生コン工場の技術者が骨材粒度の安定化やスランプやワーカビリティーに関する認識を深めることを提言した。
 その後、生コンセミナー部会長の犬飼利嗣氏(岐阜工業高等専門学校教授)をコーディネーターに、基調講演、 話題提供者らで討論した。上東氏は不具合の原因はかつて、暑中期における豆板と温度ひび割れが多かったが、温度ひび割れについては施工前に行うシュミレーションによって大幅に削減できたことを紹介。暑中期における豆板を減らしていくには、「工場と施工者の連携が不可欠」と述べた。

最新技術取り入れを

 吉兼氏は、「材料計量でも現在のバッチ式と連続計量の測定精度は大きく変わらない。製造側も最新技術を取り入れていくべき」とした。また、十河氏がセメント・コンクリートのカーボンニュートラルに向けて、施工者に対して残コンの削減やスラッジの活用に協力するよう促したところ、吉兼氏は「スラッジはJIS化されているものの使われていない。使われないと装置や機械も進化しない」とし、積極的に利用するよう訴えた。