2020年2月28日 読売新聞
社会インフラの長寿命化を考える
構造物の老朽化対策には予防保全が必要で、早めの点検で経済的な延命化策が可能となる。
近未来コンクリート研究会 代表 十河茂幸氏に聞く
インフラストラクチャーの老朽化の現状
我が国のインフラも既に2500を超す橋梁が供用制限を受けているとの報告があります。橋梁数は、2m以上が73万橋と言われ、そのほかには建設年が不明な橋梁など100万橋があると推計されています。これらの橋梁は、5年間の点検がすべて終了し、今後補修が順次実施されることになっていますが、補修が追い付いていないのが実状です。しかも、その多くは、市町村の管理下にある橋梁がほとんどで、国、道路管理会社、県の管理下にある橋梁と異なり小規模であることから、補修の実施規模が小さく、受注が成立しにくいのが実状です。
早期の点検で予防的な対策が可能
現状で鉄筋コンクリート橋梁の点検は、打音検査と近接目視で行われていますが、その点検でわかるのは、すでに内部の鉄筋が腐食している部材と認識されます。このような場合の補修では、鉄筋の腐食膨張を止める措置が必要となります。これに対して、予防保全の本質は、鉄筋が腐食を始める前の「潜伏期」(例えば、塩害であれば塩化物イオンが浸透して鉄筋が腐食を始める前の段階)か、鉄筋が腐食しても腐食膨張でひび割れが生じる前の段階の「進展期」に劣化を早期発見することにあります。なお、目視点検でも、一部に異常を感じたインフラを詳細点検すれば、効率的に延命化が図れるはずです。予防保全が維持管理コストを軽減することは明らかです。
予防保全でのコンクリート構造物の補修策
腐食鉄筋の補修方法では、腐食した鉄筋の不導体被膜を修復できる亜硝酸リチウムの注入や圧入が考えられます。しかし、予防的な措置で行う補修では、鉄筋が腐食する前か、腐食していても軽微な段階では亜硝酸リチウムの表面からの表面保護工法で可能な場合があります。本来コンクリート構造物は耐久性が高いものですが、劣化が進んだ鉄筋コンクリート構造物は、コンクリートの弱点を補強する鉄筋が腐食する点に問題が存在します。予防保全は、その鉄筋の腐食を早期に発見し、それに備えることにあります。相当に腐食が進行していると、電気防食や亜硝酸リチウムの注入工法などもありますが、早期の発見で予防保全に適した亜硝酸リチウムの表面保護工法などの選択で経費を削減することが可能です。
なお、アルカリシリカ反応(ASR)によるコンクリート構造物の劣化には、リチウムイオンによるアルカリシリカゲルの非膨張化が期待できる工法もあり、劣化因子の存在で適材適所の対応も必要です。