本日は平日のご多忙のところ、また、猛暑の中、かくも多数ご参加頂き有難うございました。私は、一般社団法人コンクリートメンテナンス協会代表の徳納です。
本年度、私たちコンクリートメンテナンス協会は、札幌から那覇まで全国25か所でフォーラムを開催いたします。
長崎での開催は今年は初めてでございます。この地ででの開催に至った理由として、地元で頑張っています会員の西田塗装、そして、九州で根を張って補修に取り組んでいる極東興和㈱の要望がありました。また、地元コンサルタント会社からの要請もありました。そして、昨年、建築研究所の軍艦島高層ビル群保存プロジェクトに参加し、長崎市役所の鉄筋コンクリートの塩害対策の熱心な取り組みに触れました。そのような色々な要望を受けて、本日の長崎フォーラムの開催を決意いたしました。
私たちは、昨年まで、コンクリート劣化のメカニズム、そして、その対処工法についてを重点に開催しました。
そして、今年からは、補修工法選定の考え方について重点を置いた内容としています。
コンクリートの補修設計は難解だとよく聞きます。
本日の第一部でお話がありましが、補修のシナリオをデザインしてそのシナリオに沿って調査から診断、補修設計に取り組むと難解な問題も解くことができます。
コンクリート補修検討を行うとき、まず現地で調査して
劣化機構と劣化因子の特定をします。
それは、塩害なのか、中性化なのか、ASRなのか?
そして、劣化のグレードを確定します。 潜伏期、進展期、加速期、劣化期のどこに位置するのかを確認します。
そのためには、その数値的裏付けの確認が必要です。
塩害だと塩分量、中性化だと中性化残り、ASRだと残存膨張量などです。
次に、求められる補修結果の要素を加えます。それは、構造物が置かれた環境状況や、経済的環境そして、どれくらい延命したいかなどです。
そして、最後に、補修方法の決定と進めば
コンクリート補修とは決して難しいものではありません。
補修工法選定は二つの考え方があります。
・劣化因子を入れない補修方法の検討なのか?
・それとも、既に劣化因子が入ったものの対策検討の補修なのか?
劣化因子を入れない方法は、環境に応じて、要求される性能を考慮して、被覆材を選択すればいいと思います。
そして、
劣化因子がすでに入ったコンクリートの補修は、難しそうですが、実は選択肢があまりありません。
塩害・中性化による劣化ですと、鉄筋防錆を目的とした工法になります。
鉄筋防錆を目的とした工法は、電気防食かもしくは防錆剤を使った工法になります。防錆剤を使った工法の代表格が、亜硝酸イオンを使った工法です。
また、ASRだと、リチウムイオンを効果的に内部圧入する工法でしか化学的には劣化の進行を止められないのです。
コンクリート補修設計はこのようなシナリオで考えを進めていかなければ、多くの材料に惑わされて、難解なものになります。
そのような話を本日の第一部前半で行いますので、業務のご参考にしてください。
われわれは工法協会ではありません。私たちコンクリートメンテナンス協会は、有効な新しい技術を、議論しながら、推進しています。
その一つが「亜硝酸リチウムの圧入技術」です。
この亜硝酸リチウムの圧入工法は 3つのNETIS技術のくみあわせであり、土木学会・材料学会・コンクリート工学会等で多く発表され、国内各地で多く採用されている技術でございます。
この工法はASR対策の唯一のこうほうであり、劣化因子がすでに入っている塩害対策として、電気防食と同様に注目を集めている技術です。
現在、佐賀県武雄土木事務所で行われています、山内高架橋補修工事はASR対策として高圧で亜硝酸リチウムを圧入しております。
また、第二部では、最近注目されている新技術の塗膜型剥落防止対策工法の紹介をさせて頂きます。
剥落防止工法は、三軸メッシュの工法、ラミネートシートの工法、そして、この塗膜型剥落防止工法です。塗膜型剥落防止工法はその性能はもちろんですが、工期短縮できることが魅力です。
そして、本日の配布資料に入れていますが、支承狭隘部も重防食できる、金属溶射工法を紹介していますし、亜硝酸リチウムとケイ酸系を組み合わせて、劣化因子の侵入防止と防錆効果の両方を持った含浸工法も本年度から取り組んでいます。
われわれの、補修の考え方を、本日の講師の江良先生に技術資料として作成して頂きました。
これは、実際の業務をする江良先生がまとめましたので、実務で使える内容になています。
この技術資料の前半、劣化のメカニズムから補修方法まで、わかりやすく解説しており、また、唯一の亜硝酸リチウムの解説本です。 必ず、皆様の業務のお役にたつと確信しております。
本日の講習は三時間半の長時間となりますが、最後までお付き合いお願い申し上げます。